日々の食事と共に、何かの記念の日に、また今まで訪れた数多くのパーティーで、最もなじみ深く接してきた飲み物が、ワインだ。もちろん、僕の接してきたワインのほとんどは安いワインであったし、アロマや歴史、味わいを饒舌に語り尽くすような経験をしてきたわけではない。

しかし、そのような浅はかな付き合いであるにもかかわらず、ワインは互いのコミュニケーションを促すより特別な飲み物であることを感じていた。例えば美味しいワインが食事の場に出れば、それは皆の話題になり、そこで色や匂いについての言葉が出た。そしてラベルやヴィンテージを確認する。普段ワインには興味の無いものまで目を向けるような魅力が、そこにはある。また、長期的な保存と熟成が可能な特色は、人々にまた別の機能を与えてくれる。記憶と記録だ。作り手、場所、時代の記録が封印された一本のワインは、飲む人の、もしくはそれを集める人のそれぞれの記憶を形成しうるものだ。

ある人は、自分の妻の、子どもの誕生した年のワインをその記念として特別なものとするだろう。またある人は名作と呼ばれるワインの出た年の、最高級の作り手によるワインを美術品にも似た感覚で求めるかもしれない。この赤いグラデーションの中には、それを持つ人の意識と記憶、そしてワイン自体が持つ記録性が封じ込められている。コレクターやセラーの持つコレクションを、纏めながら見ていくことで持つ人の思いも同時に感じることができるだろう。人々がなぜワインに魅了されるのか。そして今現在の様々なワインの表情を記録するのが本作品の大きなテーマである。類型的に表される様々な「赤」から、ワインという飲み物の美しさと多様性、そしてその中に眠る様々な思いを感じ取って欲しい。

  • 「Château Mouton Rothschild 1989」ラムダプリント
  • 「Château Cheval Blanc 1982」ラムダプリント
  • 「La Tâche 1980」ラムダプリント
  • 「Château Mouton Rothschild 1978」ラムダプリント
  • 「Vieux Château Certan 1961」ラムダプリント
  • 「Opus One 1994」ラムダプリント
  • サイズ:800x800mm/サイズ:500x500mm/サイズ:200x200mm

大和田 良 略歴

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